映画「蝶の眠り」いよいよ公開になります。

映画「蝶の眠り」いよいよ公開になります。

 

試写をみていただいたかたから「映像美」ということによく触れていただいています。Yahoo!ニュースにおいては『「珈琲時光」や「ノルウェイの森」を彷彿とさせる』とまで書いていただいたり。

 

中山美穂さん演じる主人公の涼子の住む家は「中心のある家」という本にもなっている建築家・阿部勤さんのお家をお借りして撮影しました。

 

「中心のある家」という本の中には外と内という言葉がよくでてきて、外の自然や光をうまく生活の内に取り込めるように作られています。

 

実際に行ってみると入り口の前の大きな欅の木や庭や垣根のたくさんの緑がまず目につきます。お家には複数の窓が絶妙に配置されていて、そこから光が入り込んで、内の暗がりに落ちてきます。欅などの植物の葉をすり抜けてきた光達の揺らめきで外の小さな風の存在も感じられたり、光で1日の色々な表情がみられて、外への空間の広がりや想像力も刺激される、素敵なお家です。

 

周りの緑から反射して入ってくる淡いグリーンや青空光のやわらかなブルー、まぶしくて優しい太陽の光、冷たく暗いコンクリート。

 

初期の脚本には「万物有愛」という言葉がありました。万物には愛が宿る。最終的にはなくなってしまいましたが、病気によって記憶(というよりそれまでの自分といったほうがいいのか)を失っていくなかでの愛が描かれている本作にとってとても重要な言葉だと、ぼくは受け取りました。ひょっとしたらそれは、人ではなく物に近づいていくことかもしれないから。僕自身、森に転がってるような石になりたいなぁ、などと考えていたこともあって。

 

そういった意味で主人公涼子の住む阿部さんのお家で感じた、自然や光、温度などからうけるこの印象を、映像として表現することはストーリーテリングのひとつとして重要であると考えました。

 

具体的には照明の谷本幸治さんと相談してテストをして、ライティングでつくるグリーン反射の塩梅や、青空光はLUTで青方向の発色を少し変えて印象的にしたり、グレーディングで暗部にほんのり青空のような光をのせたり。

 

参考としてまさに「ノルウェイの森」「言の葉の庭」「ブライト・スター」なんかを谷本さんにみてもらったりしてプランを練っていきました。

 

涼子の家以外にも、ロケーションや美術や照明で魅せる映像の美しいシーンがたくさんあります。

 

是非劇場でご覧ください。

 

予告編